第1章 熱帯夜 ♯3



 ♪誰が止めても君は行くよね その瞳を緋色に染めて

 テーマソングは、マーブル・クエーサー(最愛の照くんが歌うバンド)のデビュー曲、『緋色』!! 『緋色』が『ヒーロー』に聞こえるように、心の中で歌うのだ!!

 ♪ねえ 眩しすぎるよ 走り抜ける 緋色……

 ……ヒーロー!! キャー照くんステキ!! って、盛り上がっている場合ではない。

 巳咲は二本足で歩く猫のように足音も気配すらも消し(たつもりで)、ソロリソロリと廊下を進む。その手に彫刻刀セットと汗を握り……ああウチの廊下ってこんなに長かったっけ? どうやら人はコッソリ歩く時、歩幅がいつもの半分ほどになるようだ。よって体感距離がいつもの倍になる。明日みんなに教えてやろう。

 リビングのドアの前で、再び精神統一。
 さぁ、覚悟しなさいコソドロ野郎! 巳咲は全神経を集中し、戦闘モードに入った。体中にみなぎるオーラ、ねえ眩しすぎるよヒーロー!!

 そう、私は緋色のオーラに包まれたヒーロー、この街の平和は私が守る。

 巳咲は背筋をピンと伸ばし、おもむろにドアを開いた。
 薄闇に慣れた目を、青白い薄明かりが包み込む。冷えた空気が、ほてった頬を撫でる。そしてその冷気に乗って、部屋の奥からくぐもった声が……。

 ♪イェ〜 7アイテム ドロボーの これで仕事はパーフェクト 7アイテム持ってるか〜? 

 突然、頭の中で、謎のラップが暴走を始めた。

 ♪1(one)まずは懐中電灯(ライトアップ) 2(two)ポケットから針金(ピッキング) コイツでカギを開けるのさ (中略) ヘイ! 手袋忘れちゃダメさベイビー 指紋は残すなレッツゴー隠滅 タララ完全犯罪の〜 

 ……そうか、これは『完全犯罪の歌』なのか。
 
 ♪ヨゥ 緊張感がダイナシだ ダイナシダイナシ ノノンノ〜ン

 どうしてこんな時に初のオリジナル曲が出来てしまうんだ……。

 ま、いっか。
 気を取り直し、巳咲は薄明かりに目をこらした。

 ……おや? あれは人影か、青白い光の中にユラユラと、二つの影が?
 やっぱりヒトリゴトの多いドロボーじゃなかったのね……でも、ヒーローはそんな細かいことは気にしないのだ。

 さぁ、いよいよこの世の悪の根源と、闘う時がやってきた!
 ヒーローオーラ全開!! 巳咲はエクスカリバー(彫刻刀)を握り締め、最初の一歩を踏み込んだ!!

posted by レイジ・レーベル at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第1章 熱帯夜
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