第4章 リリカル・スイッチ #16



 CRAPS WEB SITE
 退屈そうな少年達よ

「……アキオ、これ何?」
 トップページのタイトルに、いきなり珪人は引いていた。
「親父が20代の頃組んでたバンドのサイトだよ」
 タイトルの下に、当時の写真が載っている。CRAPSのライブがいかに熱狂的だったかを、証明するような1枚だ。ギュウ詰めのフロアに今にもダイブしそうな若かりし日の親父、こっちに飛んで来いと我先に手を伸ばす人人人……。
「なんかバクちゃん、ボーカルより目立ってね?」
「……だから、人の親父を『バクちゃん』呼ばわりしないで欲しい」
「だってオマエらの親父、『バクちゃん』て呼ばねーと怒るじゃん」
 ……確かにそれはそうですが。親父を本名(樹生)で呼んで怒られないのは、如月のじいちゃんぐらいである。ハハちゃんも『バクちゃん』と呼ぶし、バンド仲間にも、このサイトの中でも『バク』と呼ばれている。

 BAND HISTORY
 ”We are CRAPS!!”
 伝説のバンド、CRAPSは、新年の幕開けと共に産声を上げた。
 とあるライブハウスの、カウントダウンイベントでのことだった。バク率いる人気バンド、fibberは、ライブの途中で新たなヴォーカリストを紹介した。そして年が明けるその瞬間に、CRAPSという名の、全く別のバンドに生まれ変わって見せたのだ。
 あの瞬間の衝撃を、僕は未だに忘れられずにいる。


 珪人は秋生に聞いた。
「『僕』って、誰だよ?」
「……このサイトを、作った人だと思うけど」
 それは秋生にもわからない。しかも、写真とかバンバン使ってるしライブ音源も聴けたりするから、メンバー公認のサイトに見えるが。ウチの親父は「はぁ? こんなの誰が作ったんだ?」とか言っていた。
 おいコラ『僕』、非公認じゃねぇか!!
 珪人はさらに、秋生に色々聞いてきた。
「……で、このフィーバーだかファイバーってのは?」
「『フィバー』だよ。クロウが入るまで、親父がボーカルとギターやってたバンド」
「……クロウって、誰」
「CRAPSのボーカル。つまり、fibberってバンドにクロウが入って、CRAPSになったんだよ。しかも、年越しライブの真っ最中に、いきなり」
「……じゃあ、クロウは飛び入り参加なのか?」
「違うよ、『ライブ途中でいきなり別のバンドになったら面白いよな』って、クロウが言って」
「影でこっそり、ステージに出るタイミングを、待ち構えていたのか」
「そう! そうなんだよ!!」
 珪人がやけに食いつくので、秋生はなんだか嬉しくなってきた。だったら是非、ボクが知ってるCRAPSの全てを話してあげようじゃないか。
「CRAPSはね、親父いわく『ブルースを歌うパンクバンド』で……どんなバンドだよ? って感じなんだけど、とにかくスゴイ人気だったらしいんだ。メジャーデビューの話も結構あったらしいんだけど」

 しかし、CRAPSの歴史は、クロウの失踪により、突然、幕を閉じた。

「でもね、クロウの失踪が、デビューがダメになった原因じゃないんだよ。親父たちにとってバンドは『おやつ』みたいなもので、その頃はもうみんな……」

 しかし、秋生のCRAPS話も、珪人の素朴な疑問により、突然、幕を閉じた。
「……つーかオレ、なんでコレ見せられてんの?」
「……なんで、って……」
 これにはさすがの秋生も、ブチッときた。
「だからぁ、さっきの『マフィアのボス』が、このバンドのドラムなんだよ!!」
「……じゃあオマエらの親父は、イタリア人とバンドを?」
「はぁ!? ミッキーは日本人だよ、見りゃわかんだろそれぐらい!!」
 つまり、肉だんごにキレた親父を取り押さえたのが、元CRAPSである。失踪してCRAPSを解散させた張本人も、下にいる。そして、親父が「何を食べようかに〜♪」と歌い踊る横でシタール(インドの弦楽器)を弾いていたのが、ベースのシャカである。
「だいたい、『見せてやれよ』って言ったのは、ハルじゃん!!」

posted by レイジ・レーベル at 02:13 | Comment(1) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ
この記事へのコメント
ヒマな時にでも見てくれるとうれしいです。
Posted by ako3535 at 2006年07月22日 17:14
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