第5章 スパイ #11



 双子と霞は、屋上までは出ずに、その手前の階段で、巳咲と珪人を待っていた。

「……ゴメン、遅くなった」
 慌てて階段を駆け上がろうとすると、霞が真ん中あたりまで下りてきた。
「遅いよ、もう私、クマさんの話、しちゃったよ?」
「だって、ケイトが給食当番だったんだもん」
 巳咲は大げさなため息をついて、双子よりもちょっと下にドカッと座った。
「……で、ケイトくんには、話したの?」
 言いながら、霞も巳咲の隣に、スカートを気にしながらチョコンと座る。
「……いや、話したというか……」
 口ごもっていると、珪人は「聞くも何も」と呆れながら、双子をまたいで一番上に座った。
「……聞くも何も、オマエらがニブすぎるんだよ」
 珪人はとっくに、気づいていたのである。巳咲がそれを知ったのは、牛乳ビンを運び終え、屋上に向かうその途中のことだった。

 「……ねぇケイト、バババーの机にあった、キリンのことなんだけど……」
 「ああ、あれって、例のヤツだろ?」
 「……え? 『例のヤツ』って」
 「だからぁ、ウサギと同じ……」
 「隠しカメラ入ってるって、気づいてたの!?」
 「……まさかオマエ、今さら気づいたのか?」
 「……ええ、つい、さっき……」

 巳咲は一人二役で珪人との会話を事細かに再現し、地団駄を踏んだ。
「知ってたんなら言えよ、もう!! 牛乳ビンは運ばされるしバカ女どもにはニラまれるし!! 損の重ね塗りじゃん!!」 しかし。
「え〜ミサキちゃんがカワイソ〜。ケイトくん、牛乳ビンぐらい1人で持ちなさいよぅ!!」
 そう言って同情してくれたのは、春樹だけであった。しかもナゼか、霞口調。

「……どうでもいいけど、ハル、どうしてカスミちゃん口調なの?」
「あのね、二人がなかなか来ないから、モノマネして遊んでたの〜」
「……は?」
「えーと、私がカスミちゃんで〜、カスミちゃんがアキオくんで〜、アキオくんがハルくんになって、喋ってたの」
「……なかなか面白そうだね、それ」
「じゃあ、ミサキちゃんは、ケイトくんの役、やる〜?」
「……いや、遠慮しておく」

 できれば巳咲は秋生の役をやりたいが、そんなことをして遊んでいたら、昼休みが終わってしまう。

 つーか、ハルのボケに付き合ってる間に、あっちで勝手に話進んでるし!! 

 いつの間にか秋生も霞も、珪人を挟んで一番上に座っていた。巳咲は春樹を放置して、秋生の隣に座り直す。

「ねぇ、どこまで話進んだの?」
「……ウチの親父にバレた、ってとこまで」
「え、バレたって、何が?」

 なにやら話は、思ったよりも進んでいた。進みすぎて、話が見えない。
 秋生は面倒くさそうにため息をついて、珪人と顔を見合わせた。

「何が、って……ケイトが泊まりに来た日、例のサイトを見たこと、だよ」
posted by レイジ・レーベル at 01:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 目次
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