第5章 スパイ #13



「『知らねぇ』じゃないよ、ハルがうっかり『買い物カゴ』クリックしたからじゃん!!」
「はぁ? オレはちょっと触っただけじゃねぇか!!」
「だからそれが、『買ったこと』になっちゃったんだよ!!」
 双子は罪をなすりつけ合いながら、それぞれゴチャゴチャ説明しだしたが。

「……あの、2人同時に言われても、わからないから」

 どっちがヘマをやったのか、巳先にとってはどうでもいい話である。どうせハルが悪いに決まってるし。
「あの、とりあえず、ケンカは後にしてくんない? さっさとしないと昼休み終わっちゃうよ?」
 
 さて、双子の話をまとめると、こうである。
 昨日、双子宅に、小包が届いた。宛名が『藤野樹生様』だったので、もちろん本人(双子の父)が開けた。そして中に入っていたのが、盗撮用の小型カメラだった訳である。当然、父には思い当たるフシがないので、家族全員に聞いてみた。

「オレが『懸賞当たったんじゃねぇ?』て言ったら、『じゃあなんで金を払うことになってんだ?』って」
「それでボクも、『新手の詐欺じゃないの?』ってトボけて。『相手にすることないよ』って言ったんだけど……」
「あのアホが、電話かけて『オマエらこのオレをだまそうってのか!? いい度胸じゃねぇか!!』ってケンカ売ってた」
「……で、結局、着払いで送り返したんだけど。もう本当に慌てたよ、向こうが『パソコンに履歴が残っているはず』とか言ったらしくて、もう慌てて履歴消してさぁ……」

 つまり、単にカメラが家に届いただけの話であった。結局バクちゃんは、例のサイトのことも、実は双子たちが見たことも、間違えてカメラを買ってしまたことも、知らないのだ。
「誰だよ、『親父にバレた』とか言いやがったの……」
 霞はものすごい形相で、秋生をニラんだ。そして珪人も。どうやら「バレた」と聞いて焦ったのは、巳咲だけではなかったらしい……。  ここからは、話が早かった。
「夏休みに学校中のカメラ全部、ブッ壊してやろうぜ」
 春樹の提案に、みんなはニヤリと、不敵な笑みを浮かべた。

「そうだよね〜、あんな物は、壊した方がいいよね〜」
「うん。私としては、今すぐにでも壊したいぐらいだけど」
「いや、慎重に計画を練ってからだよ。まずは下調べをして……壊している現場を盗撮されてたら、意味ないじゃない」
「……面倒くせぇな」
「面倒でも、やるんだよ!! 『スパイ人形全滅作戦』だ!!」

 そして早速、巳咲宅に寄り道して、計画を練ることになった。しかし、本当の目的は、昨日ママが作りすぎたシュークリームを食べることである。とりあえず、前祝いということで……。

「そうだ、成功したら、お祝い何にする!?」
「……あ、オレ、ライヴ行きたい」
「じゃあ、みんなで行くか!!」
「打ち上げライヴだ〜!!」
「ワ〜イワ〜イ!!」
「ねぇねぇ、何のライヴにする〜?」

 巳咲は当然、マーブが見たい。だって初めてのライヴは絶対マーブって決めてるの……席はモチロン最前列で……あ、もし照くんと目が合ったらどうしよう!? 例によって巳咲の妄想はどんどん膨らんでいく。そんでライヴが終わったらスタッフの人に呼び止められるの、照くんがキミと話したいって言ってるんだけど、ちょっと楽屋来れないかな? なんて……
「……キャー!! どうしよう!?」
「……『どうしよう』って、オマエ」
「ミサキちゃん、予鈴鳴ったよ?」
「……え?」

 妄想に夢中で、全然気がつかなかった。いつの間にかみんなは階段の下にいて、現実(教室)に戻ろうとしている。
「ほら、モタモタしてないで。さっさと立つ!!」
 霞はまるでお母さんみたいなことを言って、巳咲の腕をグイグイ引っぱった。
「早くしないと。次は音楽室だよ!?」
「……あ、そっか!! 急がなくっちゃ!!」
 そして巳咲もハッと現実に返り、猛ダッシュで音楽室へ。着いたところでやっと手ぶらだったことに気づき慌てたが、霞がしっかり巳咲の分も、教科書やらリコーダーやらを用意してくれていたのである。
 カスミちゃんはいいお母さんになりそうだ……と思ったのは言うまでもない。
posted by レイジ・レーベル at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第5章 スパイ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。