第4章 リリカル・スイッチ #18



 現在時刻、23:19。

【本当に「デタラメ教えんなよアイリーン」だよバッド(下向き矢印) アキオくんに、謝っておいて。】

 藍里のメールには、秋生への、あるメッセージが隠されていた。【謝っておいて】ではなく、その前の文章に、である。
「……まさかアイリーン……『モヤモヤ日記』を……?」

【「デタラメ教えんなよアイリーン」】
 
 それは藍里が、秋生の『モヤモヤ日記』を、読んでいることを意味していた。なぜなら、今日書いた文をそのまま抜粋しているからである。ボクの周りにブログなんか読むヤツはいないし、そう思って日々のモヤモヤを実名でつづってきたが、甘かった。
「どうして何もかも知ってんだあの女は!?」
「……盗聴でもされてんじゃないの?」
 夕方、珪人とそんな会話を交わしたが、何のことはない。藍里が何もかも知っているのは、秋生のブログを読んでいたからである。バンドのことも今日のお泊り会のことも、巳咲が見たネット放送のことも、ブログに書いた覚えがある。ということは……ちょっと待てよ、ボク前にもアイリーンのこと書いてなかった!?
 しかし、今ここで『モヤモヤ日記』を開く訳にはいかない。今さら藍里の悪口を書いたことに気づいても、どうせもう手遅れである。

「……とりあえず、スラッシュ足してアクセスしてみるよ……」
 秋生はもう、巳咲が見たネット放送になんか興味はなかったが、無駄な労力を使ったことにイラついてみせ、心の動揺をごまかすしかなかった。
「……本当に、『デタラメ教えんなよアイリーン』だよ……」
 どうせなら、藍里のメモでは[http]と[//]の間の[:]が抜けていたことも指摘すれば良かったのだ。賢明な秋生はすぐ間違いに気づいたが。続きを読む
posted by レイジ・レーベル at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

第4章 リリカル・スイッチ #17



 現在時刻、23:03。

 ♪薔薇を散らして カオスに燃ゆる 愛のフレイム〜

 携帯から突然流れ出した思いがけない歌に、ギョッとしたのは珪人だけではなかった。
「ちょっと何、その悪趣味な着うたは!?」
「テメー、そんなウザイの入れてんなよ!!」
 双子の露骨な拒絶反応に、珪人は慌てて携帯を開く。こんな歌を入れた覚えはないものの、誰の仕業なのかは双子の目(耳?)にも明らかだ。
 珪人を挟む格好で、双子は携帯を覗き込む。
「……やっぱりアイリーンだ」
「つーかアイリーン以外いねぇだろ」
 なぜならその着うたは、珪人の姉が崇拝するゴス系バンド、trois-croix(トルワ・クルワ)のデビュー曲だったからである。
「どうでもいいけど、テメーらこそ人の姉貴を『アイリーン』呼ばわりすんなよ」
 本当にどうでもいいが、今やその呼び名が姉のチームにまで浸透し、珪人まで恥ずかしい名前で呼ばれて迷惑している。

【ゴメンねたらーっ(汗)ケイティ】

 件名で、珪人が姉たちに『ケイティ』呼ばわりなのが、早速バレた。
「……ブハッ!! 『ケイティ』だってよ!!」
「ちょっとハル、そんなに笑っちゃ悪いよ〜」
 爆笑する春樹と、笑いを堪えきれない秋生。
「……」
 珪人は何か言い返そうと思ったが、とりあえず放置。続きを読む
posted by レイジ・レーベル at 02:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

第4章 リリカル・スイッチ #16



 CRAPS WEB SITE
 退屈そうな少年達よ

「……アキオ、これ何?」
 トップページのタイトルに、いきなり珪人は引いていた。
「親父が20代の頃組んでたバンドのサイトだよ」
 タイトルの下に、当時の写真が載っている。CRAPSのライブがいかに熱狂的だったかを、証明するような1枚だ。ギュウ詰めのフロアに今にもダイブしそうな若かりし日の親父、こっちに飛んで来いと我先に手を伸ばす人人人……。
「なんかバクちゃん、ボーカルより目立ってね?」
「……だから、人の親父を『バクちゃん』呼ばわりしないで欲しい」
「だってオマエらの親父、『バクちゃん』て呼ばねーと怒るじゃん」
 ……確かにそれはそうですが。親父を本名(樹生)で呼んで怒られないのは、如月のじいちゃんぐらいである。ハハちゃんも『バクちゃん』と呼ぶし、バンド仲間にも、このサイトの中でも『バク』と呼ばれている。

 BAND HISTORY
 ”We are CRAPS!!”
 伝説のバンド、CRAPSは、新年の幕開けと共に産声を上げた。
 とあるライブハウスの、カウントダウンイベントでのことだった。バク率いる人気バンド、fibberは、ライブの途中で新たなヴォーカリストを紹介した。そして年が明けるその瞬間に、CRAPSという名の、全く別のバンドに生まれ変わって見せたのだ。
 あの瞬間の衝撃を、僕は未だに忘れられずにいる。


 珪人は秋生に聞いた。
「『僕』って、誰だよ?」
「……このサイトを、作った人だと思うけど」
 それは秋生にもわからない。しかも、写真とかバンバン使ってるしライブ音源も聴けたりするから、メンバー公認のサイトに見えるが。ウチの親父は「はぁ? こんなの誰が作ったんだ?」とか言っていた。
 おいコラ『僕』、非公認じゃねぇか!!
続きを読む
posted by レイジ・レーベル at 02:13 | Comment(1) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。