第4章 リリカル・スイッチ #15



 20:00ジャストへ、タイムスリップ。

 1回目の乾杯で、すでに皆、できあがる。参加者全員(未成年以外)でビールの早飲み競争をするせいである。
「お〜!! 今年もスゲエごちそうだな!!」
 今年も見事チャンピオンの親父、何から食べようかに〜♪ と歌い踊る。
「オレらも料理手伝ったんだぜ!! ほら!!」
 自慢げに『お楽しみ肉だんご』の皿を差し出す春樹。
「お〜!! ウマそうだな!! どれどれ?」
 そして一番デカイ肉だんごを口に運ぶ親父、
「あ、それは……」
 慌てて止める秋生、しかし時すでに遅く。
「……☆※#@*ッ!!」
 親父の口から、デロ〜ッと黄色と緑色の混じったひき肉が……
「……テ、テメエ!! 何食わせんだコラ!?」
 怒り狂う親父を、昔のバンド仲間が取り押さえる。


 現在時刻、22:38。

「……くっそう親父め、桃もワサビも大好きなくせしてよー……」
「別々に入れりゃ良かったんじゃね?」
 ツッコミがいないと、春樹と珪人の会話はバカ全開である。
「でもさぁ、好物がダブルで入ってた方が楽しくねー?」
「だよな、『お楽しみ肉だんご』だもんな」
「……なのにキレやがって、親父のために一生懸命作ったのに!!」
 しかも秋生は、親父がキレてからツッコミやがった。しかもクスッと笑いながら。

「桃もワサビも、肉だんご向きの食材じゃないよね」

 だったらどうして、作ってる時に言わないんだ!? もしオマエが止めてくれれば……しかし春樹は、あえて秋生を責めなかった。せっかく珪人が泊まりに来たんだから、男3人で楽しくやろうと思ったのだ。しかも、クチうるさい女ども(巳咲と霞)もいないしね!
 春樹の予定では、ここで珪人に合うギターを見つけて、今頃は自分たちの部屋でセッションをしているはずだった。秋生は「何のために」と言っていたが、ここに忍び込んだのは言うまでもなくバンドのためである。巳咲が見たとか言う、ワケのわからんネット放送のためではない。

 それなのに。

「……どうも、盛り上がらん」

 珪人はギターを選ぶどころか全然弾けないし、秋生はパソコンをいじってばかりで全然かまってくれない……さっきコッソリ覗いたら、一体何考えてんだか、高山植物のサイトなんか見ていやがった。
 ……つーかアイツ、なに勝手に一人でいじけてんの?
 人のことは言えないが、春樹は秋生の身勝手さに、嫌気がさしてきた。

「……なぁケイト、やっぱり親父に」
 ギターの弾き方を教えてもらいに行こうか? と、言いかけた時である。
 珪人がいきなり、ワケのわからんことを言い出した。

「そういやハル、あれってヤクザじゃねぇの?」
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posted by レイジ・レーベル at 01:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

第4章 リリカル・スイッチ #14



 現在時刻、22:17。

 さっきから、春樹が助けを呼んでいる。
「なぁアキオ、ベースできるんだから、ギターぐらい弾けるよな?」

 状況から察するに、ギターの弾き方がわからなくて、困っているらしい。しかも珪人は、フルアコを立てて弾こうとしている。おいハル、また嘘教えたな? オマエにとってセミアコはレスポール、フルアコはウッドベースなのか? 一体どこまでアホなんだろう、今度は「音が出ない」と大騒ぎ!! アンプをつないでないんだから音が出ないのは当然だ!!
 ツッコミどころ満載すぎて、秋生は面倒くさくなった。

「……そんなの、親父に聞けばいいだろ」

 秋生は今、バンドの名前に適した言葉を探すのに、忙しい。インターネットで調べてみると、世の中には実に、様々な名前のバンドが存在し、その由来も多岐に渡っていた。たとえば「フランス語で○○という意味」、「ドイツにある村の名前」……秋生は参考になりそうなものを、バンド用のノートに書き込んでいく。

 参考になりそうな「バンド名の由来」
 ・何となくフランス語の辞書を見てたら、目にとまった。
 ・地図でカッコイイ地名を探した。
 ・高山植物の学名
 ・古典文学の登場人物
 ・絵本のタイトル
 ・殺人鬼の名前


 ……参考例が、多すぎる。
 的を絞るつもりが、ますます決めにくくなってきた。探せば探すほど選択肢が広がって、まさに五里霧中の心境だ。

 秋生は思わず、助けを呼んだ。春樹が意外に執念深いのを、忘れていたのだ。

「ねぇハル、どうしよう!?」
「……そんなの、親父に聞けばいいだろ〜?」

 秋生は思わず、言葉を失った。さっき自分が言ったセリフをそのまま返されてしまうほど、強烈なイヤミはない……。続きを読む
posted by レイジ・レーベル at 23:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

第4章 リリカル・スイッチ #13



 現在時刻、22:02。

 そろそろ二人は、ギターを見るのに、飽きてきた。
「あーあ。やっぱり弾けねぇとつまんね〜」
 春樹は両手両足をバラバラに動かすことはできる。でもなぜか、両手の指をバラバラに動かすことができない。つーか、コード覚えんの面倒くせーし。 
『オレができないことは、できそうなヤツに任せる』
 それが春樹のポリシーである。

「なぁケイト、バイオリンできんだから、ギターも似たようなもんじゃん?」
 春樹はバイオリンに似たデザインのギター(フルアコ)を、珪人に渡した。
「ほら、これをバイオリンだと思って」
 すると珪人は、ちょっと考えて。
「……こう、か?」
 素直な彼は、ギターを肩に乗せようとした。
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posted by レイジ・レーベル at 22:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第4章 リリカル・スイッチ

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